東日本大震災から10年 伝えていきたい高齢者の災害への備え

今年は2011年3月11日の東日本大震災から10年の節目を迎えます。震災当時、北東北圏の本部長だった岡田さん(現株式会社ツクイ 営業部 部長代理)に震災を振り返って、当時のことや災害への備えとして大切な事を聞きました。

震災が起きた3月11日、私は青森県・秋田県・岩手県・宮城県のエリア長と一緒に秋田県内で会議をしていました。
秋田県内でも震度5強の揺れで、電気が消えて、電話も使えずまったく状況が分からない状態でした。しばらくして、震源地が宮城県ということだけが分かりました。エリア長と相談し、とにかく各エリアに戻って現地を確認してもらうことにし、私自身も宮城県内へ行くことにしました。しばらくはひどい余震で何度も携帯電話の緊急地震速報のアラームが鳴りやまなかったのを覚えています。

ラジオから入る情報と、何度も携帯電話に入るツクイ本社や上長からの着信に事態の深刻さを感じました。被災地のお客様やスタッフの安否は全く分からない状況でした。一刻も早く現場をこの目で確かめて正確な情報を伝えなければと思いました。ガソリン補充もままならい状況でしたが、どうにか給油して5時間かけて宮城県へ入りました。翌朝、ツクイ若林七郷デイサービスセンターに着くと、ご自宅に帰れない30名のお客様がスタッフと一緒にいらっしゃいました。スタッフ自身も自分の家族の安否もわからない状況のなか、お客様のケアに必死で当たっていました。自分の家族が心配でたまらないだろうに「私はお客様とここに残ります」と言ってくれたスタッフたち。本当に胸が熱くなりました。その姿を目の当たりにして私自身「介護が必要なお客様に、自分たちのやれることをやろう。一日も早くサービスを再開しよう」と決意しました。スタッフも皆同じ思いでした。県内では浸水した事業所もあります。水も食料も何もかも不足していました。このような状況下でしたが、ツクイは一週間後には市内のデイサービスを再開させることができました。

被災から一週間で再開できたデイサービスは、おそらく仙台市内でツクイだけだったと記憶しています。なぜ短期間でサービスを再開することができたのか。それはツクイが全国展開をしていることと無関係ではありません。被災地に物資を運ぶには危険もあります。しかし、ツクイには新潟県中越沖地震等を経験したスタッフもいて、どんな物資が不足するのか予測し、素早く行動を起こしてくれたのです。翌日には食料や衛生備品など必要な物資が届けられました。さらに東北地方からだけでなく西日本など全国のツクイから物資が届けられました。
もう一つ大切なことは組織の力だと思います。震災から数日後には会社のトップが自ら現場に来て一緒に復興活動をしてくれました。デイサービスで一緒に寝泊まりをしての活動です。どれだけ心強かったかしれません。本当の意味での現場第一だなと感じましたし、被災地だけでなく、みんなで一緒だったからこそ乗り越えられたのだと思います。組織の本当の姿が見えた気がしました。

炊き出しの様子

震災から家族を守るために必要なこと

震災で津波の被害にあった石巻のスタッフが体験した出来事ですが、当時激しい揺れの後、大津波警報が出て、近隣の日頃から交流のある高校に避難することにしました。何度も何度も車を往復させて40名のお客様を高校に避難させていきました。高校についても、車いすのお客様を2階、3階に運ぶのは簡単ではありません。そんなときに、高校生が膝まで水につかりながら車いすごとお客様をかかえて避難させてくれました。水位がどんどん上昇してきて、最後には津波に追いかけられるようでした。高校生がいなければ最後のお客様を助けることはできなかったと思います。

そんな経験を経て改めて思うのは、災害の時はいかに地域とつながっているか。自分の存在を知っている人が周りにいるかということ。あの時助けてくれた高校生も、日頃から交流があったから、ツクイの送迎車を見て、車いすの高齢者がいると下まで降りてきてくれたのだと思います。

遠距離で暮らしている高齢の家族をお持ちの方も同様です。通常、知らない人を助けに行くのは難しいものです。「〇〇さんのおばあちゃんが、ここに住んでいる」という事を知っている人を一人でも増やすことが大切です。ぜひ、いざという時に頼れるご近所や介護スタッフ、ケアマネジャーなどとの関係づくりをしてほしいと思います。
今は携帯電話1つで家族の居場所や室内の温度などの管理までできてしまう便利な時代です。もちろんいわゆるIT化は必要です。でも一方で災害は各地域で起こりますし、電気もガスも止まります。離れたところからでは手を差し伸べられないことは現実に起こります。いざという時、力になってくれる地域の人との関係づくり。ツクイもそんな時に頼られる存在でありたいと思っています。

津波に耐えた桜の木

コラム監修

株式会社ツクイ
営業部 部長代理
岡田 和也

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営業部 部長代理
岡田 和也

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