自分の足で歩く ~抗重力筋にはたらきかけるウォーキング~

日本人のうち28.4%が65歳以上(2019年)と超高齢化が進む中、中高年の方の健康意識もますます高まっているようです。誰でも、どこでも手軽に始められるウォーキングですが、悪い姿勢のまま続けていると関節を痛めるリスクも。
今回は、2回にわたって「自分の足で歩く」をテーマに介護のノウハウを強みとしたIT開発を行う、ツクイグループの株式会社DIGITAL LIFEで健康増進支援サービスを担当する理学療法士の林さんと、介護用品などシニアライフを応援するECサイト『SONOSAKI LIFE』の担当者、砂山さんに話を聞きました。前編では、シニア世代が筋力を維持向上するためのウォーキングのポイントをお伝えします。

シニア世代は“歩幅”を意識しよう

砂山:最近は、テレワークによる運動不足も多いと聞きますが、若い方からシニアまで世代を問わず街でウォーキングをしている方を以前よりよく見かけます。

林:有酸素運動のウォーキングは、生活習慣病予防だけでなく、筋力を維持向上することで介護予防にもつながりますが、シニア世代の方の中には、前かがみのまま歩いていたり、体重が左右どちらかに偏って歩いていたりするなど身体のバランスがくずれた姿勢でウォーキングをしている方を見かける事があります。

砂山:転倒も心配ですね。ウォーキングが健康に良いイメージはありますが、シニア世代がウォーキングする時の注意ポイントなどの情報が少ない気がします。そもそも、若い時と比べてシニアの骨や関節にはどんな変化があるのでしょうか?

林:一般的に、高齢になると若いときに比べて筋肉量が減り、特に下半身の変化が大きくなります。筋肉量の減少とともに関節にも負担がかかるようになり、軟骨が擦り減ってしまい痛みが生じます。また、筋力低下に加えて股関節の柔軟性が失われると、歩幅も狭くなっていきます。若い時に比べて歩幅が狭くなっているなと感じたら、下半身の筋肉量が減少していたり、関節の柔軟性が低下しているのかもしれません。

歩ける体作りのポイントは抗重力筋

砂山:歩幅が目安になるのですね。気を付けてみます(笑)。「いくつになっても自分で歩きたい」というのは多くの人の願いだと思います。シニア世代が自分の足で歩き続けるためのポイントを教えていただけますか?

林:抗重力筋をご存じでしょうか?大別すると背中・腹部・お尻・腿・ふくらはぎにある筋肉で、その名の通り重力に抵抗してバランスを保つ筋肉です。立っている時や座っている時も、私たちは常に抗重力筋を使っているのです。
「立つ」「歩く」という動作には重力に負けない筋力が必要ですから、ウォーキングをするときには、この抗重力筋を鍛えることがポイントです。

砂山:「立っているだけ」「歩くだけ」でも抗重力筋は鍛えられるのですか?

林:それだと良いのですが、残念ながら、ただ立っているだけ、歩いているだけでは十分とはいえません。抗重力筋を鍛えるためのウォーキングは「立ち姿勢」「歩く姿勢」がポイントになります。
お尻を引き締めて背筋を伸ばして顎を引き、腹筋を使って背筋を伸ばします。そして、踵で着地して母趾(足の親指)でしっかりと蹴りだして歩きます。この時に体重がスムーズに移動しているかも感じてみてください。これを意識するだけでウォーキングの質はグッと変わってくると思います。実際にやってみると、筋肉を使っているのが感じられるのではないでしょうか。

シニアのウォーキングのコツは「足元!」

林:ウォーキングをするシニア世代にもう一つ気を付けていただきたいポイントがあります。ポイントは足元。スニーカーを履いてウォーキングしている方も多いと思いますが靴の踵部分が柔らかすぎるものは避けた方がいいと思います。足は歩く土台です。小さな骨が多く集まっている足部をしっかりと包んでくれるサポート力のある靴をおすすめします。

砂山:その点でいうと、シニアの方向けの靴はサポート力の高い商品が多いですね。土踏まずのアーチを支えるインソールを採用している商品もあります。

林:特に偏平足の方は歩くときに膝や腰に衝撃を受けやすいのですが、土踏まずのインソールがあると、だいぶカバーできますね。中年以降の女性に外反母趾が多くみられますが、外反母趾の方は、蹴り出しがしにくくなったり、偏平足(アーチが崩れる)にもなりやすいです。足の形は千差万別ですから土踏まずのインソールの高さが合っているか、指先は靴の中で動かせるかという点も靴を選ぶポイントですね。

ポールウォーキングで全身運動

林:ウォーキングに問題がない方は、「ノルディックポール」を持って歩くポールウォーキングという方法もあります。左右に杖(ポール)をついて歩くので支持基底面が4点と安定します。正しく持つと背筋が伸びて頭・背中・腰がほぼ一直線となります。足が振り出しやすくなり歩幅もひろがり、結果として長く歩けるようになります。

砂山:ポールを持ってみると確かに安定感がありますね。さらに歩いてみると腕を動かすので肩甲骨も動きますね。肩こりが改善しそうです(笑)

林:一見楽にみえるポールウォーキングですが、ポールを使うことで自然と全身の筋肉を使います。抗重力筋に働きかけるのはもちろん、通常の歩行時にあまり使わない上肢の筋肉や肩甲骨も動かすため全身運動にもなりますよ。

砂山:最近、ポールウォーキングをしている方を見かけることも以前より増えてきましたよね。『SONOSAKI LIFE』でも「ノルディックポール」を取り扱っていますが、ポールウォーキングの魅力を、もっともっと多くの方に知ってもらいたいです。

後編では、高齢者の方の杖の選び方をご紹介します。どうぞお楽しみに。

シニアライフを応援するECサイト『SONOSAKI LIFE』:ノルディックポール特設ページ

コラム監修

株式会社DIGITAL LIFE
DIGITAL WELLNESS事業担当
理学療法士 社会福祉士 介護支援専門員 リハビリテーション学修士
林 悠太

コラム監修

株式会社DIGITAL LIFE
Webサービス事業
ECサイト「SONOSAKI LIFE」運営担当
砂山 ちひろ

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理学療法士 社会福祉士 介護支援専門員 リハビリテーション学修士
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