高齢者のスマホ事情

高齢の家族がいる方にとって、スマートフォンは連絡手段だけではなく、安全を確認するためにも必要不可欠なツールになりつつあります。

特に高齢の家族が離れて暮らしている場合、スマートフォンは日用品の買い物から緊急時の連絡、居場所検索まで役に立ちますが、最近はそれだけでなくアプリで家電と連携することで、室内の温度管理や服薬のサポートなどもできるようになっており、その可能性はどんどん広がっています。
しかし、実際にスマートフォンは高齢者に普及しているのでしょうか?ツクイのデイサービスのスタッフの経験を持ち、現在ツクイグループのシニア向けサービスの研究所であるミライ想造ラボ「ミラボ」のスタッフとして働く三好さんは「実はデイサービスにお越しになるお客様のなかに、スマートフォンは持っているけど家に置きっぱなしだと話すお客様が結構いらっしゃいました」と話します。持っていても、本人が持ち歩かなかったり、使いこなせなかったりすると、遠方に住む家族は安全確認をできません。

今回は、“アフター60の挑戦を紡ぐ場所”をテーマに60歳以上の一般的にフレイル期を迎えるシニア世代をサポーターとして迎え、これまでの常識とは異なる『新・セカンドライフ』を多面的に提案しているミライ想造ラボ「ミラボ」で行われている「スマホ教室」で、高齢者がもっとスマートフォンを活用できるようになるヒントを三好さんに伺いました。

高齢者がスマートフォンを使えない理由?

スマートフォンを持っているのに、自宅に置きっぱなしだったお客様はこれまで携帯電話などを持ったことはなかったのでしょうか?
「どうやら携帯電話、いわゆるガラケーからスマートフォンに変わったタイミングで使えなくなってしまうお客様が多いようです。」と三好さんが教えてくれました。移動通信機器の普及の流れを見てみましょう。

図 総務省令和元年版 > 携帯電話の登場・普及とコミュニケーションの変化(移動通信サービスの普及と進化)

ガラケーが普及したのが2000年前後。現在80歳の方は約20年前の60歳前後で初めてガラケーを持つことになります。そして、スマートフォンの普及が2010年前後ですので、70歳前後でスマートフォンに切り替えたものの使いこなせなくなった方が多い。と考えられそうです。

図(出典)内閣府(2020)「情報通信機器の利活用に関する世論調査」を基に総務省作成

70歳以上の方のスマートフォンの利用状況は半数以上が「ほとんど利用していない」「利用していない」と回答しています。利用しない理由については1位が「必要ない」2位が「使い方が分からない」となっています。実際にデイサービスのスマートフォンを使わなくなってしまったお客様からは「家族に聞くと怒られちゃって嫌になっちゃった」「携帯会社で聞こうにも予約が取れなかった」などの理由が多く聞かれたそうです。

この日、「ミラボ」で開催されたスマホ教室は「LINEの使い方」のテーマで、70~80代 の3名のサポーターの方に参加いただきました。3名のうち2名はリピートでの参加でした。LINEの操作について説明を進める中で、“LINEのグループ”の概念を理解するのに少し時間はかかりましたが、「一斉にグループに入っている人に連絡できるってことですね」と三好さんが説明すると「そっか。昔の連絡網を一斉にできるってことね!昔は連絡網の途中で情報が変わっちゃったりしたわよね」と“連絡”というキーワードで理解が深まったり、「LINEのお友達の自動追加を許可しない」などのトラブル防止の情報をお伝えしたり、予定の1時間では足りなくなるほど皆さん熱心に質問されていました。最後に「LINEの使い方ガイドをパソコンで見たり、印刷したものを見ながらやってみるのもいいかもしれませんよ」という三好さんのアドバイスでこの日の「スマホ教室」は終了しました。

「ミラボ」で開催される「スマホ教室」は1時間。「初めてのスマホ」「LINE基礎操作編」「LINEでTV電話を使ってみよう」などテーマを決めて組まれていますが、それ以外に「なんでも個別相談」という枠も人気だそうです。ではどのくらい操作ができるようになれば“スマホを使える”といえるのでしょうか。

高齢者のスマホ操作 3つのステップ

高齢者向けのスマホ操作は大きく3つのステップに分けて考えることができそうです。
まずスマホ操作の中で「電源のONOFF」「電話の受信発信」「音量の変更」が基本中の基本の操作と言えそうです。「電話の受信発信」と言っても、電話帳から発信するのと、数字を推して発信する、着信履歴から発信するなど何通りも方法があります。

そして次のステップに「メール」「LINE」「カメラ」「ビデオ通話」。これができるとスマホの操作も徐々に楽しくなってきそうです。

さらに次のステップで「地図」「乗換案内」「動画閲覧」。ここまで使いこなせると、スマホ操作に自信がもて、更にZOOMやゲームなど、色々なコンテンツへの挑戦されるサポーターも多いそうです。

コロナ禍で移動が難しく、遠方の家族と会えない時、ビデオ通話などはとても便利なツールです。また、認知機能を維持するという側面でもLINEや電話などのコミュニケーションツールを使用することは有効だと思います。便利なスマートフォンですが、インターネットに接続されていることで思わぬトラブルに発展することもあります。リスクについてもしっかりと知り、いざという時に使えるように、普段から楽しく便利に活用していきたいですね。

ミライ想造ラボ「ミラボ」はこちらから

コラム監修

三好 さおり
株式会社ツクイホールディングス
社会福祉主事任用資格
養護教諭一種

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三好さおり
株式会社ツクイホールディングス
社会福祉主事任用資格
養護教諭一種

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