積雪による被害・影響を受けられた皆様にお見舞い申し上げます。
生活習慣を見直して冬を元気に乗り切ろう!

1年で最も寒いのは1月と2月の境、まさにもうすぐ2月に入る時期が『1年で一番寒いころ』と言われているそうです。寒い日は、暖かい部屋から出るのがつらいという方も多いのではないでしょうか。暖かい室内で過ごしたいと思うのは老若男女問わず言えることだと思いますが、高齢者はこの時期に活動量が低下してADL(日常生活動作)の低下を招くことも少なくありません。
今回は、ツクイで看護師・機能訓練指導員として勤務する看護コーチの土田さんに、冬の寒い季節に見られる高齢者の体の変化についてお話を伺いました。「毎年冬になると、体力や筋力が低下するお客様が増えます。」と心配する土田さんが勤務するのは山形県で、毎年冬には雪が降る地域のデイサービスです。雪が降っていない地域でも寒さから外出を控える方がいらっしゃいますが、雪が多い地域では尚更です。ご家族が転倒等を心配して、デイサービスの利用をお休みするケースもあるそうで、そうなると結果として自宅にこもりがちになり、体力や筋力の低下につながることがあります。こういった気候を要因とした高齢者の行動や身体への影響や、寒さに負けない為のポイントについてお話を伺いました。
寒さが高齢者の心身に与える影響
たとえば高齢者世代に多い腰やひざなどの関節痛は、寒さで余計に痛みを感じる場合も多く、身体に麻痺があると冬は動かしづらくなるケースもあります。痛みを避けるために室内にこもる方が多く、さらに、身体を動かすと痛むから動かさないように過ごすことにより活動量が減り、体力や筋力が低下します。体力や筋力が低下すると、歩行などの日常生活動作が不安定になり、転倒を恐れて外出への意欲も低下する。といった悪循環に陥ることが多いようです。
過去にも、デイサービスの利用を長期間お休みされていたお客様が久しぶりに来所したら、筋力が低下していて歩行が不安定になっていた。というケースは少なくありませんでした。中には、ご自宅でも移動が難しくなったため「家の中では這って移動していた。」という方もいらっしゃいました。

高齢者にとっては、デイサービスに通う事だけでも大きな運動となりますので、出来るだけ継続して来所いただけるよう、寒い冬は暖かいお風呂を準備してお待ちしていますが、お客様は体調もメンタルの状態も日々異なると思います。機能訓練を頑張ろうと思える日もあれば、気乗りしない日があるなど、色々な日があるのは当たり前。私たちケアに関わるスタッフは、お客様の気持ちに寄り添いながら、心地よい時間を過ごしていただけるように日々をサポートしていきたいと思います。
【参考】当社デイサービスご利用者のADL(日常生活動作)と自粛期間の関係
2020年に当社が新型コロナウイルス感染症等によるデイサービスの利用自粛とADL(日常生活動作)の関係をデイサービスのお客様約27,000名を対象に調査しました。調査の結果、自粛期間が長いほどADLの低下率が大きくなることが分かりました。このデータは新型コロナ感染症等を要因とするデイサービスの利用自粛とADLの関係を表していますが、寒さによって外出を控えて自宅にこもる場合も、その期間が長引くほど高齢者のADL低下につながる可能性があります。

寒い冬を元気に過ごすポイント
寒い季節を元気に過ごすポイントを「衣服」「食事」「運動」「睡眠」に分けてご紹介します。

「衣服」
外出が辛くならないよう、まずは服装でしっかり寒さ対策をしましょう。
大きい血管が表面近くを通っている首・手首・足首は、ハイネックや靴下などでしっかりとまもります。お腹周りを冷やしてしまうような短いインナーは避けましょう。デイサービスで厚手のセーターを着ているお客様を見て、重くて動きにくそうだな。と感じることがありました。ご家族から衣服について質問をいただいた際はフリースなど伸縮性がよく、軽めの素材をおすすめしています。また室内外の温度差が大きい季節は、調整が出来るように着脱しやすいものを重ねることもポイントです。
カイロはお腹・背中を温めるのに有効ですが、直貼りや薄い肌着に貼ると低温火傷の可能性もあるので貼る場所に注意が必要です。デイサービスでも入浴の際などに確認することが多いのですが、赤くなっているケースも見かけます。同じ場所に長時間貼らないように気をつけましょう。
「食事」
夏野菜はとり過ぎないようほどほどに。体を温める根菜類、温野菜、鍋やおでんなど温かい食事で体の中から温めるようにしましょう。カフェインは身体を冷やすので、白湯やノンカフェインの温かい飲み物がおすすめです。冬は汗をかかずとも、乾燥や吐く息の量が多くなることで脱水のリスクもあります。マスクをしていることによって加湿され、喉の渇きに気が付きにくい事があります。水分補給のポイントは、一気に飲むよりも、ちょこちょこ飲みがおすすめです。食事の時、入浴の前後、就寝前などタイミングを決めて摂取すると、気が付いたら脱水になっていたという事も防げます。
就寝前の水分摂取は夜中の排尿に影響がある為嫌がる方が多いですが、量は喉を潤す程度の少量で良いので水分補給してから就寝すると安心ですね。
「運動」
冬は実際に歩く機会が減るので、ウォーキングなどの軽い運動で、下肢筋力の維持を心掛けましょう。ウォーキングが難しい場合は足踏みや屈伸、かかとの上げ下げなどでも効果が期待されます。特にかかと上げは、第二の心臓ともいわれるふくらはぎの筋肉を使いますので、血行促進・冷え対策にも効果的です。そのほか、手の指・足の指をゆっくり握って大きく開く運動で指先まで血液を行きわたらせることを意識したり、首・手首・足首を回したり、肩や背中などを伸ばすストレッチで筋肉をほぐすことでも血行が良くなり体が温まります。
転倒リスクがある場合は、無理せず椅子に座って安定した姿勢で行ってください。
デイサービスではお客様に合わせ、寝たきりや拘縮が進みそうな方へは可動域を維持する訓練を行い、歩ける方へも半年に1回体力測定を実施して半年前と現在の体力を比較しています。
「睡眠」
夜にしっかりと眠れるように、日中はリズムのある生活を心がけましょう。
湯たんぽ、電気アンカ、電気毛布などで体を温めるのはよいですが、低温火傷をしないように使用には注意が必要です。
冬の体調変化を見逃さないために
冬は体調の変化が多い時期ですから、ケアに関わる私たちスタッフも気が抜けません。些細な症状でも大きな病気が隠れている可能性があります。デイサービスでも、お客様の体調に変化がないか観察し、ご本人にもお聞きするようにしていますが、ご本人自身が体調の変化に気づいていない場合もあります。ご家族から、「昨日少し動悸があったみたい」などのささいな情報でも、いつもと違うことをお知らせいただけると本当にありがたいです。ご家族と介護スタッフが連携して高齢の方の様子を見守れると理想的だと思います。
立春になるとだんだん気温は上向きになるようです。それまでリズムある健康的な生活を心がけて、寒い時期を元気に乗り越えましょう。
コラム監修
土田 唯
株式会社ツクイ
ツクイ寒河江
看護師

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土田 唯
株式会社ツクイ
ツクイ寒河江
看護師
