毎年9月21日は、アルツハイマー病等に関する認識を高め、世界の患者と家族に援助と希望をもたらす事を目的に、「世界アルツハイマーデー」と定められています。そして9月は「世界アルツハイマー月間」として、認知症への理解を呼びかける様々な活動が行われています。
2025年には65歳以上のうち4人に一人が認知症を発症している、という時代が来るといわれています。両親など身近な方や、自分自身もなるかもしれない認知症ですが、いざ身近な方が認知症になったら、どのように接すればよいのでしょうか?
「世界アルツハイマー月間」をきっかけに、認知症を知り、認知症の方への向き合い方を考えてみませんか?
認知症の中核症状とBPSD(行動・心理症状)
「おしゃれな方が身なりに気を配らなくなる」「同じことを何度も聞く」「いつも探し物をしていて不安な様子」など、いつもと様子が違う時は認知症が原因の可能性もあります。
認知症の症状は、脳細胞が死ぬことで脳の機能が低下して起こります。記憶障害・見当識障害・理解、判断力の低下などの症状を「中核症状」といいます。
認知症の中核症状によって生じる心の葛藤やストレス。加えて性格、環境など個人によって異なる様々な要因がからみ合って起こる行動や症状を「BPSD(行動・心理症状)」といいます。「BPSD」には、不安や焦燥、うつ状態、睡眠障害、幻覚・妄想徘徊、興奮・暴力、不潔行為など、中には日常生活が困難になったり、ご本人だけでなくご家族も心身ともに疲れ切ってしまう場合もあります。「BPSD」は、ご本人の性格や気質にストレス耐性、健康状態、服薬状態など異なる背景や、ご本人を取り巻く環境などが複雑に絡まって起こります。
「BPSD」を改善するには
改善が難しいといわれる認知症。確かに「中核症状」は改善しにくいのですが、「BPSD」は症状が改善することも、逆に悪化することもあるのです。
そのポイントとなるのが、ご本人に対するご家族や周囲方の接し方です。
ご本人を支えるご家族など周囲の方が、ご本人の状態を理解して自尊心や尊厳を大切にすること。失敗や喪失体験に触れることは避け、ご本人が出来ることや楽しめることに焦点を当てること。説得や指導ではなく感謝の気持ちを伝えるなど、ご家族や周囲の方が「忘れたって、出来なくたって大丈夫!」と心の余裕と安心感をもつことがとても重要です。
ご家族など親しい方が認知症になったことで、つらい気持ちの方もいるかもしれません。
しかし、認知症になっても豊かに生きがいをもって毎日を楽しまれている方もたくさんいらっしゃいます。毎日関わるご家族や周囲の方の温かい対応こそが、ご本人の安心感につながります。そのためにも、一人で不安を抱え込むのではなく、かかりつけ医に相談して専門医を紹介してもらったり、必要に応じて役所や地域包括支援センターを活用するなど、ご本人とご家族をサポートするシステムをぜひ活用してください。
コラム監修
株式会社ツクイ サービス管理部 サービス品質課
シニアスペシャリスト 稲澤 菊子
介護支援専門員/介護福祉士/神奈川県認知症介護指導者