年齢を重ねるにつれ、「以前より食事の量が減った」「好きだったものを食べなくなった」と感じることは少なくありません。
しかし、「年齢のせいだから仕方ない」と見過ごしてしまうと、必要な栄養が不足し、低栄養状態につながる可能性があります。低栄養は筋力や免疫力の低下を招き、転倒や体調不良などのリスクを高める要因にもなります。
今回は、高齢者が「食べられない」理由とその対処法についてご紹介します。
高齢者が「食べられない」理由
味覚・嗅覚の変化
加齢に伴い、味覚や嗅覚が低下することで、おいしさを感じにくくなることがあります。特に塩味や甘味を感じにくくなる傾向があるといわれています。
身体機能の低下
噛む力や飲み込む力(嚥下機能)、胃腸の働きが低下すると、食事そのものが負担になったり、少量で満腹感を覚えたりすることがあります。
活動量の減少
外出や運動の機会が減るとエネルギー消費量が少なくなり、空腹を感じにくくなります。
病気・薬の影響や心理的要因
便秘や認知症など、さまざまな病気や心身の不調が食欲低下の原因となることがあります。
また、服用している薬の影響で、口の渇きや味覚の変化、胃もたれなどが起こることもあります。
さらに、一人で食事をする機会が増えたことによる寂しさや気分の落ち込みなど、心理的な要因が食欲に影響する場合もあります。
低栄養が招くリスク
低栄養とは、エネルギーやたんぱく質などの必要な栄養素が不足している状態です。 進行すると、筋肉量の減少による転倒リスクの増加、免疫力の低下による感染症の増加や回復の遅れ、さらには脳への栄養不足による意欲低下など、さまざまな問題が連鎖的に起こりやすくなります。
「食べられない」ときの対処法
食事の工夫と水分補給
ゆずやだしの香りやうまみ、旬の食材の彩りなどで食欲を刺激したり、食事量が少ない場合は1日4~5回の分割食や、補食で栄養を補いましょう。
また、食事量が減ると脱水を起こしやすいため、汁物や豆腐、ゼリー、果物などの水分の多い食品を取り入れ、脱水予防を心がけましょう。
食べにくさがあれば、やわらかくする、一口大にする、とろみを付けるなど、食べやすい形に工夫しましょう。
ご本人が好きなものを中心に、主食に加えて、卵・豆腐・魚・肉などのたんぱく質を意識して取り入れましょう。
ワンポイント
65歳以上のたんぱく質摂取量の目安は、男性が1日に60グラム、女性が1日に50グラムとされています。医師や管理栄養士などから指導を受けている場合は、その内容を優先してください。
お口の健康を確認する
入れ歯の不具合やむし歯、口の中の痛みなどが原因で食事量が減ることがあります。
気になる症状がある場合は、早めに歯科医師へ相談しましょう。
また、むせ込みや飲み込みにくさがある場合は、医療・介護の専門職へ相談し、嚥下(えんげ)調整食や栄養補助食品の活用を検討しましょう。
薬の影響が疑われる場合も、自己判断で中止せず、医師や薬剤師へ相談することが大切です。
生活環境を整える
軽い運動や外出、会話の機会を増やしましょう。 また、生活リズムを整えたり、部屋の明るさを調整して落ち着いた雰囲気にしたりするなど、環境を整えることも大切です。
早めの受診が必要なサイン
次のような症状が見られる場合は、早めに医療機関へ相談しましょう。
- 数日以上ほとんど食べられない
- 急激な体重減少がある
- 強いだるさが続く
- 発熱やせき、腹痛がある
- 下痢や便秘が悪化している
- 意識がぼんやりしている
- むせ込みが増えた
- 飲み込みに時間がかかるようになった
高齢者の食べられない背景を見極め、ご本人の気持ちを尊重ながら食べやすさと栄養摂取方法を工夫し、「おいしく食べられた」という喜びを増やし低栄養予防につなげましょう。
コラム監修
冨永 協子
株式会社ツクイ サービス支援部 シニアスペシャリスト
看護師、看護師養成所専任教員、介護支援専門員







