

訪問介護とは?
サービス内容や費用まで
図表を使って解説!
介護サービスを検討される中で、「日常の家事が少し負担になってきた」「介護が必要になってきたけど、集団でのコミュニケーションがあまり得意ではない」「車での送迎があっても移動するのが大変」「自分の生活のリズムで食事や入浴をおこないたい」などのご希望をお持ちの方におすすめのサービスは訪問介護です。訪問介護は、ホームヘルパーが直接利用者の自宅を訪問し、個別のケアや支援をおこないます。このコラムでは「訪問介護を利用したいけど、どんなことを頼めるの?」「訪問介護ってどのくらい費用がかかるの?」などさまざまな疑問をお持ちの方に、訪問介護について詳しく解説します。これから訪問介護を利用したいとお考えの方はぜひ参考にしてください。
目次
訪問介護とはどのようなサービスですか?

訪問介護は、介護が必要な高齢者や障がいを持つ方、病気を持つ方のご自宅にホームヘルパーが訪問し、日常生活をサポートするサービスです。訪問介護は「身体介護」「生活援助」「通院等乗降介助」の三つに分類され、「身体介護」は食事の介助、入浴のサポート、排せつの支援など、「生活援助」は掃除や洗濯、買い物の代行など、「通院等乗降介助」は通院時の車の乗り降りの介助などをおこない、料金の設定も異なります。訪問介護を活用することで、利用者が住み慣れた自宅で安心して生活することができ、介護をする家族の負担も軽減されるでしょう。
訪問介護は、住宅型有料老人ホームやサービス付き高齢者向け住宅など、介護サービスを提供していない住宅型の施設でも利用できます。介護付有料老人ホーム(介護付きホーム)やグループホームなど、施設内で介護サービスを提供している施設では利用できません。
訪問介護はどんな人が利用できますか?
訪問介護の対象者は主に以下の方々です。
高齢者
介護保険制度に基づき、要介護1~5の認定を受けた方が基本ですが、要支援1・2の方も介護予防・日常生活支援総合事業(総合事業)として利用できます。また、要介護認定を受けていない方であっても、介護保険制度を利用しない自費サービスとして利用できます。
要支援1・2の方は、主に掃除・洗濯・買い物・調理などの生活援助と、必要に応じて身体面のサポートを受けられます。
要介護1~5の方は、 生活援助に加えて、食事の介助、入浴のサポート、排せつ介助などの身体介護を利用できます。
障がい者
身体的または精神的な障がいにより、自宅での生活に介助が必要な方が対象です。65歳以上の身体障害者手帳、療育手帳、精神障害者保健福祉手帳を持つ方は、介護保険サービスを優先して利用でき、訪問介護サービスで身体介護や生活援助などを受けられます。また、必要に応じてその他の障がい福祉サービスも利用できます。
訪問介護のサービス内容にはどのようなものがありますか?
訪問介護の「身体介護」「生活援助」「通院等乗降介助」の主なサービス内容をご紹介します。
身体介護
カテゴリ | 内容 |
---|---|
移動・移乗支援 | 車いすの操作支援/ベッドからの起き上がり支援/トイレへの移動支援 |
入浴支援 | 入浴の準備/入浴中の安全確保や介助/入浴後の体拭きや着替えの手伝い |
食事支援 | 食事の準備や配膳/食事の介助/食事の後片付け/栄養に配慮が必要な方への特別食の調理 |
排せつ支援 | トイレへの誘導やサポート/尿器やおむつの交換/排せつ後の清拭(せいしき) |
更衣支援 | 着替え(寝間着・下着・外出着・靴下など)の手伝い |
体位変換 | 体位の変更/長時間同じ姿勢になることを避けるための支援 |
口腔ケア | 歯磨きの手伝い/口内の清掃/食事後の口内のケア |
体温・脈拍測定 | 体温の測定/脈拍の測定/健康状態の把握 |
外出支援 | 医療機関への通院介助/日用必需品の買い物同行 |
生活援助
カテゴリ | 内容 |
---|---|
掃除 | 掃除(部屋・台所・トイレ・浴室など)/ゴミ出し |
洗濯 | 洗濯機の操作/洗濯物を干す、取り込む、たたむ |
ベッドメイク | ベッドのシーツ交換/布団カバーの交換 |
料理 | 食材の準備/調理/食事の配膳・下膳/食器の洗浄 |
買い物 | 必要な食品や日用品の購入/購入した物品の運搬/支払いの手伝い |
薬の受け取り | 薬局での薬の受け取り |
日常的な相談 | 日常生活に関する相談/情報提供 |
訪問介護における身体介護や生活援助の内容は利用者の状態やニーズに応じて調整されるため、具体的な内容は利用者ごとに異なります。
通院等乗降介助
利用者が通院等をおこなう際に、ホームヘルパーが乗車と降車の介助や病院と車までの移動の介助を提供するサービスで、介護タクシーが提供するサービスに該当します。
車両への乗降介助等が介護保険の対象となり、移送に係る運賃は介護保険の対象外です。
訪問介護で対応できないのはどんなこと?
利用者が希望するサービスの中には、訪問介護では対応できないものもあります。その場合は、他の訪問系のサービスを利用するか、専門の業者や家事代行サービスなどの利用を別途検討する必要があります。利用者からの相談が多い、訪問介護では対応できないケースをご紹介します。
利用者の家族の分の料理
訪問介護における料理は基本的に利用者本人のためのものです。家族全員分の料理は範囲には含まれていません。
医療行為
医療行為である注射や点滴は看護師や医療スタッフによっておこなわれます。褥瘡(じょくそう)の処置なども訪問看護などのサービスを利用することになります。
専門的なリハビリテーション
専門的なリハビリテーションや運動療法は、理学療法士・作業療法士・言語聴覚士などによる支援が必要です。
家事全般の大規模なサポート
大規模な掃除や物品の整理整頓、 大きな家具の移動、大量の洗濯物の処理など、重労働を伴う作業は訪問介護の対象ではありません。
屋外での作業
草取り、庭の手入れ、外の掃除、外壁の掃除などの屋外での作業は、訪問介護では対応できません。
家の設備の修理
水漏れや電気の故障など、家の設備の修理は訪問介護では対応できません。専門の修理業者に依頼する必要があります。
法的手続きや行政手続きのサポート
法律相談や契約書の作成、法的手続きなどは、法律の専門家や行政書士に依頼する必要があります。
特別な娯楽活動
娯楽活動やレクリエーションのサポートは訪問介護の範囲外です。
訪問介護の利用料金はどれくらいですか?
訪問介護の利用料金は、以下の条件によって異なります。
- 訪問介護の利用時間帯
- 訪問介護の利用時間
- 訪問介護の利用内容
- 訪問介護の地域区分
- 利用者の負担割合
- 加算などのその他の費用の有無
神奈川県横浜市の訪問介護を利用した場合の1回あたりの利用料金の目安です。

昼間:
午前8時~午後6時
早朝・夜間:
午前6時~午前8時・午後6時~午後10時
深夜:
午後10時~午前6時
身体介護1回あたりの利用料金
20分未満 | 20分以上30分未満 | 30分以上1時間未満 | |||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
負担 割合 |
昼間 | 早朝 夜間 |
深夜 | 昼間 | 早朝 夜間 |
深夜 | 昼間 | 早朝 夜間 |
深夜 |
1割 | 182円 | 227円 | 273円 | 272円 | 340円 | 407円 | 431円 | 539円 | 646円 |
2割 | 363円 | 454円 | 545円 | 543円 | 679円 | 814円 | 861円 | 1,077円 | 1,292円 |
3割 | 544円 | 681円 | 818円 | 814円 | 1,018円 | 1,221円 | 1,291円 | 1,615円 | 1,938円 |
生活援助1回あたりの利用料金
20分以上 | 45分以上 | |||||
---|---|---|---|---|---|---|
負担 割合 |
昼間 | 早朝 夜間 |
深夜 | 昼間 | 早朝 夜間 |
深夜 |
1割 | 199円 | 249円 | 300円 | 245円 | 306円 | 367円 |
2割 | 398円 | 498円 | 599円 | 490円 | 612円 | 734円 |
3割 | 597円 | 747円 | 898円 | 734円 | 918円 | 1,101円 |
身体介護に引き続きおこなった生活援助の1回あたりの利用料金
20分以上 | 45分以上 | |||||
---|---|---|---|---|---|---|
負担 割合 |
昼間 | 早朝 夜間 |
深夜 | 昼間 | 早朝 夜間 |
深夜 |
1割 | 73円 | 90円 | 109円 | 145円 | 182円 | 217円 |
2割 | 145円 | 180円 | 218円 | 289円 | 363円 | 434円 |
3割 | 217円 | 270円 | 327円 | 434円 | 544円 | 651円 |
2024年6月現在
訪問介護を提供する介護事業者の加算取得状況で自己負担額は異なります。また、加算の適用条件は個人により異なります。
訪問介護の費用には、食事の材料費やおむつ代などは含まれていません。
上の料金表を基に考えると、神奈川県横浜市に住む介護保険1割負担の利用者が昼間の時間帯に45~60分間身体介護を利用し、その後引き続き20分程度の生活援助を利用した場合、利用者の自己負担額は431円+73円で504円となることが分かります。
加算とは?
訪問介護には、サービスの質や特定の支援に応じてさまざまな加算が存在します。加算は介護保険制度の一部であり、加算を算定するためには、サービス提供者が特定の条件や基準を満たす必要があります。以下は、訪問介護においてよく見られる加算の一例です。
特定事業所加算
サービスを提供する事業所が、サービスの質の向上に取り組むなど、特定の基準を満たす場合に算定される加算です。
認知症加算
認知症のある利用者に対して特別な支援やケアをおこなう場合に算定される加算です。
夜間加算
夜間や深夜にサービスを提供する場合に算定される加算です。
訪問介護を利用するためにはどうすればよいですか?
訪問介護を利用するためには、一般的に以下のような流れになります。
ステップ | 主な内容 |
---|---|
ステップ1 相談・ケアプラン作成 |
要介護認定を受けている利用者が訪問介護の利用を検討する際には、まず担当のケアマネジャーに相談します。ケアマネジャーが、利用者の身体的・精神的な状態や日常生活の支援が必要な程度、家族のサポート状況などを調査し、利用者のニーズに応じたケアプランを作成します。 |
ステップ2 訪問介護サービスの契約 |
利用者やその家族が、ケアマネジャーのアドバイスや提案を受けて、訪問介護を提供する事業者と契約を結びます。 |
ステップ3 サービスの開始 |
ホームヘルパーが自宅を訪問し、訪問介護サービスが提供されます。 |
訪問介護のメリットとデメリットを教えて

訪問介護の利用を開始してから「思っていたサービスと違った」「こんなデメリットがあったとは」と後悔することのないよう、あらかじめ訪問介護のメリットとデメリットを理解したうえで、利用者に合ったサービス選びに役立てましょう。
訪問介護のメリット
自宅での生活
訪問介護を利用することで、利用者は自宅での生活を継続でき、慣れ親しんだ環境で安心して過ごすことができます。自宅での生活は、精神的にも安定しやすく、生活の質を保ちやすいでしょう。
個別対応が可能
訪問介護は利用者一人ひとりの状態やニーズに合わせた個別ケアが提供されるため、適切な介護や支援が受けられます。また、利用者の状態に合わせて柔軟に対応できます。
家族の負担軽減
専門のホームヘルパーが介護を担当することで、介護をする家族の負担やストレスを軽減することができます。利用者と離れて暮らす家族にとっても、利用者の様子を定期的に確認してもらうことができて安心です。
プライバシーの保護
自宅でサービスを受けるため、他の利用者との接触がなく、プライバシーを守りながら生活できます。個々のニーズに応じた支援がおこなわれるため安心感があります。
訪問介護のデメリット
サービスの制限
専門的な医療処置や特別な設備が必要な場合には対応が難しいことがあるなど、自宅でのサービスには限界があります。また、必要なサービスがすぐに受けられない場合もあります。
ホームヘルパーの質に差がある
訪問介護に従事するホームヘルパーのスキル・経験・資格には個人差があります。資格のレベルや取得年月、実務経験の豊富さによって、介護の技術や知識に差が生じることがありますので、適切なサービスを受けられるよう、ケアマネジャーや事業者に相談しましょう。
緊急時の対応
訪問介護は事前に計画されたスケジュールでサービスを提供しているため、急なケアが必要な場合には、希望する時間帯にサービスが受けられない場合があります。

訪問介護は、自宅での生活を維持しながら、専門的なサポートを受けられる便利なサービスですが、サービスの制限や地域による差もあります。メリットとデメリットを十分に理解し、利用者や家族のニーズに最適な形で利用できるようケアマネジャーと一緒に調整しましょう。
利用するサービスや担当のホームヘルパーを途中で変更することはできますか?
訪問介護を利用するうちに、他の訪問系のサービスのほうが合っているかもしれないと感じたり、担当のホームヘルパーと相性が良くないなどの悩みを抱えたりすることもあるかもしれません。
そんなときはケアマネジャーや訪問介護のサービス提供責任者に相談し、サービス自体の変更や、ホームヘルパーの変更を検討しましょう。
訪問介護以外の訪問サービスはどんなものがあるの?

訪問看護
訪問看護は、看護師が自宅を訪問し、傷の手当てや点滴、注射、服薬管理、血圧や血糖値の測定、リハビリテーション支援などをおこなうサービスで、地域の訪問看護ステーションや医療機関を通じてサービスを受けることができます。
また、利用者や家族に対する医療情報の提供や生活指導もサービス内容に含まれ、利用者の健康維持と生活の質の向上をサポートします。

訪問入浴
訪問入浴は、自宅での入浴が難しい高齢者や障がい者のために、専門のスタッフがボイラー付きの訪問入浴専用車両で自宅を訪問しておこなう入浴サービスです。看護師1名と介護スタッフ2名の計3名のチームがご自宅に伺い、浴槽の準備、入浴前の健康状態の確認、入浴介助、体の洗浄、浴槽の後片付けまでをおこないます。
まとめ
訪問介護は要支援の方から要介護の方まで利用することができ、個別の身体介護や生活援助のニーズに対応できるため、住み慣れた自宅で個人に寄り添った質の高いサービスを受けることが可能です。集団での介護サービスに不安のある方や、移動が負担になる方はぜひケアマネジャーに相談してみてください。